2018年1月12日金曜日

平成二十九年 冬興帖 第一(小沢麻結・夏木久・辻村麻乃・堀本 吟・網野月を・坂間恒子)



小沢麻結
セーターの彼には話す今も全て
侘助や坂東へ彼いつ戻る
札幌に男足止め雪女郎


夏木久
破風仰ぐ火急の報せ神無月
膠もなく風に与すとの言伝
小春日の卓の余白にある碇
手招きに月の隙間へ枯芭蕉
星に馬車繋げば遠き祭囃子
半券を風に曝してゆく聖夜
木枯が角にこぼせる笑ひ茸


辻村麻乃
寄せ鍋をぐんぐん突きて晩鐘
冬満月今度は主婦になりたまへ
我々が我になる時冬花火
袋小路我が家の上の冬オリオン
凍蝶の戻るべくあり音楽堂
冬霧の三ツ鳥居より蜃に会ふ
初雪に摂社ずらりと並びをり


堀本 吟
 闇の鍋
 大阪に大正期の遊郭を料亭として営む店あり
極月や悪のあれこれ思うとき
遊客の霊に憑かれる冬玄関
部屋めぐり極彩色の絵に巻かれる
ご不浄寒し女将の粋(すい)の絵天井
花魁が横に来ている闇の鍋
虎刈笛むかしの妓楼いまの闇
枯蟷螂殺し文句に鎌立てな


網野月を
ワレワレハコノホシガスキ雪ばんば
あなたの視線綿虫を見るような
すきま風あの娘の箸の使い方
勇魚食う何百万分の一なりや
中に藷上にくだもの堀炬燵
現代俳句協会(ゲンハイ)やトイレの中の古暦
古暦慶子の下にコウ掛けて


坂間恒子
紛争に終わりのなくてしろさざんか
桃山の牡丹・錦鶏・冬の虹
油屋与兵衛足跡を消す寒椿