小沢麻結セーターの彼には話す今も全て
侘助や坂東へ彼いつ戻る
札幌に男足止め雪女郎
夏木久破風仰ぐ火急の報せ神無月
膠もなく風に与すとの言伝
小春日の卓の余白にある碇
手招きに月の隙間へ枯芭蕉
星に馬車繋げば遠き祭囃子
半券を風に曝してゆく聖夜
木枯が角にこぼせる笑ひ茸
辻村麻乃寄せ鍋をぐんぐん突きて晩鐘
冬満月今度は主婦になりたまへ
我々が我になる時冬花火
袋小路我が家の上の冬オリオン
凍蝶の戻るべくあり音楽堂
冬霧の三ツ鳥居より蜃に会ふ
初雪に摂社ずらりと並びをり
堀本 吟闇の鍋
大阪に大正期の遊郭を料亭として営む店あり
極月や悪のあれこれ思うとき
遊客の霊に憑かれる冬玄関
部屋めぐり極彩色の絵に巻かれる
ご不浄寒し女将の粋(すい)の絵天井
花魁が横に来ている闇の鍋
虎刈笛むかしの妓楼いまの闇
枯蟷螂殺し文句に鎌立てな
網野月をワレワレハコノホシガスキ雪ばんば
あなたの視線綿虫を見るような
すきま風あの娘の箸の使い方
勇魚食う何百万分の一なりや
中に藷上にくだもの堀炬燵
現代俳句協会(ゲンハイ)やトイレの中の古暦
古暦慶子の下にコウ掛けて
坂間恒子紛争に終わりのなくてしろさざんか
桃山の牡丹・錦鶏・冬の虹
油屋与兵衛足跡を消す寒椿