2018年4月20日金曜日

平成三十年 春興帖 第一(北川美美・小野裕三・仙田洋子・杉山久子)



北川美美
春岬バナナワニ園上から見
右へ左へ河津桜の原木へ
梅園を巡る途中の猿まわし


小野裕三(海程・豆の木)
万巻の背表紙に向け北窓開く
永き日の葬具一式押し進む
裏側は人の音する花馬酔木
観梅を右へ左へ食堂へ
春のひとびと快速艇が運び去る


仙田洋子
はるばると来し江南の桜かな
江南のわれも旅人桜人
春の夜の無錫の運河灯りかな
うららかや紅きランタン窓に揺れ
煬帝の運河の上をつばくらめ
上海の風に吹かれて春ショール
上海の夕日の赫と桜かな


杉山久子
スカートの楕円にまはる鳥の恋
かけがへのない日海雲を食べてゐる
亀鳴くや死の話のち湯の話