俳句新空間俳句帖
スクロールしてみる俳句巻子本。 年二回、媒体誌『俳句新空間』に転載。 SINCE 2012(平成24).12.28.
2018年5月18日金曜日
平成三十年 春興帖 第五(林雅樹・ふけとしこ・小沢麻結・飯田冬眞 )
林雅樹
飛び降りて涅槃で待つや沖雅也
春浅し塩素の匂ひしてキッチン
雛の間に翁媼と来て交る
踏青や俳人どもは屁で会話
臓物のバケツに光る日永かな
ふけとしこ
草の芽や大道芸の輪の飛んで
ベーコンとマッシュルームと春愁と
保養所といふも廃墟に松の芯
小沢麻結
春立つや林道へギア切り換へて
ぶらんこを離れぶらんこもう忘れ
チューリップ心開くにまだ少し
飯田冬眞
末黒野や風のかたちに焼け残る
焼野原大股で逝く兜太かな
去る者は去りささやかな土筆かな
振り向けば影のほかなき遅日かな
春雷や神の戻らぬ井戸を掘る
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