2018年5月18日金曜日

平成三十年 春興帖 第五(林雅樹・ふけとしこ・小沢麻結・飯田冬眞 )



林雅樹
飛び降りて涅槃で待つや沖雅也
春浅し塩素の匂ひしてキッチン
雛の間に翁媼と来て交る
踏青や俳人どもは屁で会話
臓物のバケツに光る日永かな


ふけとしこ
草の芽や大道芸の輪の飛んで
ベーコンとマッシュルームと春愁と
保養所といふも廃墟に松の芯


小沢麻結
春立つや林道へギア切り換へて
ぶらんこを離れぶらんこもう忘れ
チューリップ心開くにまだ少し


飯田冬眞
末黒野や風のかたちに焼け残る
焼野原大股で逝く兜太かな
去る者は去りささやかな土筆かな
振り向けば影のほかなき遅日かな
春雷や神の戻らぬ井戸を掘る