2018年5月4日金曜日

平成三十年 春興帖 第三(仲寒蟬・曾根毅・夏木久・坂間恒子)



仲寒蟬
海市にまだランプ磨きといふ仕事
かの世まで川向かうまで花菜畑
妻とちがふ時間を生きて朝寝かな
鶯餅やつぱり膝を汚しけり
鳥雲に入るや知恵の輪外れたる
春月や今産まれたるごとく島
結婚指輪抜けなくなりぬ春の風邪


曾根 毅
飛花落花抜けて眼鏡のつる固し
寄居虫の見えなくなりし男根期
出囃子のひとりは霞かも知れず


夏木久
観劇や間隙へ花迷ひ込み
鼻かめば話外され花ふぶく
鳥のゐる部屋を叩けり魚の貌
設計図の2階の部屋より花水木
灯は消せど出るに出られず今日の部屋
りんかくをしみじみけせるしじみじる
そこそこに底に響けるさようなら


坂間恒子
花冷えの二十四階からおりる
白蝶の壊れつつくる真正面
ひとひらのさくら冷たき捨て鏡
揚げ雲雀花束川に捨ててある
転生の夏鹿眼そらしけり