2018年8月17日金曜日

平成三十年 夏興帖 第一(松下カロ・小林かんな・西村麒麟・仙田洋子・岸本尚毅)



松下カロ
噴水の芯に少年サンテグジュペリ忌
ウェディングドレスのやうな驟雨来る
恩讐の果てのホテルのプールかな


小林かんな
数多いて一羽飛び立つ半夏生
夏草を映さぬ瞳してひつじ
茫々と眉毛の灼ける駱駝かな
猛禽の羽毛にふれし白靴よ
カピバラはやがて埴輪に星涼し


西村麒麟
毒の無き蛇かもしれぬけど巨大
滝少し空中を行き落ちにけり
手で扇ぐ三鷹の嫌な暑さかな


仙田洋子
地図濡れてニュルンベルクの緑雨かな
緑さすナチス歩きし旧市街
  銅像
ワーグナーの頭の上の巣立鳥
夏の夜を金管楽器鳴りどほし
讃ふるは黄金の麦酒の大ジョッキ
生ビール恋に飽き人生に飽き
蛇を打ち殺せしイヴのけだるさよ


岸本尚毅
孑孑の浮く水舐めて雀蜂
優曇華や見て百円の福禄寿
空蟬は鬼の貌なり百合赤く
夏帽の皆美しく買はれずに
二番子を御成通りに鳴かせをり
寝そべつて壁の如くに簾あり
灯籠やお供へものを蜂が這ひ