2018年8月3日金曜日

平成三十年 花鳥篇 第七(加藤知子・西村麒麟・水岩 瞳・ふけとしこ・中村猛虎・仲寒蟬)



加藤知子(「We」「豈」「連衆」)
木下やみ巣箱は街につながれて
藻の花のだいじそうなるはらんでる
イミテーション家族しゅうごう行々子


西村麒麟
古き世の如くに月や野遊びに
地虫出て他の地虫を見てをりぬ
潜るのが得意な鳥も春らしく


水岩 瞳
廃屋の門に瓦に飛花落花
抽斗の奥のさざ波さくら貝
脱脂粉乳今は無脂乳昭和の日
そのまんまでいいよ憲法記念日
薔薇ばらになつてゆく我夕まぐれ


ふけとしこ
西の方丈椎の香に攻められて
ででつぽつぽう桜の実黒く落ち
肘までの黒き手袋あらせいとう


中村猛虎
人間の暗渠に桜蕊の降る
囀り時々ジェットコースター
犬ふぐり母は呪文で傷治す
重心を持たないままで落つ初蝶
花は葉に左回りに摺る淡墨
ひとりずつカプセルにいて花の雨
花びらの重なってゆくふくらはぎ


仲寒蟬
蕗の薹洗濯物がすぐ乾く
ついてゆく川越えられぬ初蝶に
与太者と言はれて蛙にはやさし
砂時計砂落ちきつて鳥雲に
彼岸とも此岸ともなく川面へ花
華鬘草だけは前から知つてゐる
牡丹園観客もまた揺れてをり