2018年9月14日金曜日

平成三十年 夏興帖 第五(青木百舌鳥・早瀬恵子・坂間恒子・近江文代・北川美美)



青木百舌鳥(夏潮)
夏木立右へ左へフリスビー
軽鴨の潜りては背に水わたす
三ツ編が似合ひほほづき市の婆
すくひたる手鉢の金魚かたよれり


早瀬恵子
体内の水の八月痺れおり
武骨なる江戸前金魚のべべ着たり
ややごとにレース模様の乳房の間(ま)
己様の滝のステージ昇り竜


坂間恒子
産廃の天辺で啼く夏の雉子
夏の月白樺の幹手首ほど
柿田川デュシャンの便器投げ込みぬ


近江文代
ママ歌いたいのソーダ水くるくる
梅雨寒の豚肉縛られて沈む
片方の耳出している初浴衣
ポリープの数を夏蝶来ていると
喜んで両手差し出す夏の川


北川美美
野口五郎岳隠してゐたる雲の峰
苔茂る室生犀星旧居糸雨
片蔭の途切れ山口澄子死す