2018年9月28日金曜日

平成三十年 夏興帖 第七(木村オサム・のどか・真矢ひろみ・前北かおる・堀本 吟)



木村オサム
夏帽を振りて夏帽呼びにけり
    日盛りやブロンズ像の乳の張り
子どもより木登り巧し夏休み
次の世へ生まれそこねて海月浮く
夏痩せの男全員島流し


のどか
アスファルトに燃え尽きてゆく終の蟬
懐妊の土偶色づきそむる桃
色つきの夢消えかけて西瓜食む
歳月の翡翠色なる羽化の蟬
反骨の捩れ重ねてたうがらし


真矢ひろみ
夜濯ぐアラフォー単孤無頼たる
白玉の歪み好きなる不惑かな
逃げきって間のおきどころ夕端居
尿の切れ良くて深山に象がゐる
夏帽は深し繊毛縛しけり


前北かおる(夏潮)
似合ふ気がしてきて髪にプルメリア
日盛や首長竜が椰子になり
踊唄ひくし瓢を打ち鳴らす
祝詞あげフラ奉る合歓の花
花合歓や夜空の下のレストラン
ジャグジーにホームシックの夜の秋
虹の島傘をひらけば雨あがり


堀本 吟
友来たりその友も来て汗まみれ
有刺鉄線灼ける理想の一捻り
冷麦や君たち品を培えよ