中村猛虎子宮摘出かざぐるまは回らない
星涼し臓器は左右非対称
ビックバン宇宙が紫陽花だった頃
初盆や萬年筆の重くなる
早逝の残像として熱帯魚
亡き人の香水廃番となりぬ
古団扇定年の日のふぐり垂れ
仲寒蟬立てばすぐ谷底見えて簟
えごの花体育館に風通す
払つても払つてもまた火取虫
一本の滝白雲をつらぬきぬ
滴りに押され滴り落ちにけり
不審車に不審者が乗る日の盛
柘榴咲く多産の村の洗濯場
ふけとしこ飛石へ足置くときを糸とんぼ
水亭に人影白きさるすべり
夏の月くさかんむりを戦がせて
水岩瞳八月や残したものは絵一枚
風死せり絵筆の声を今に聴く
涼風のオール沖縄のこころかな
ただ灼けて有刺鉄線続きをり
忘れたらかはいさうやさ夏の丘
花尻万博木の国やどの青蔦も町を出て
さよならの縁(えにし)集まる茂かな
すすり泣くくちなはとして頂きぬ
一等星届かぬ距離の海月なり
街眩し少女らは立葵ほど
青簾水消ゆるまで揺れるかな