2018年10月5日金曜日

平成三十年 夏興帖 第八(小沢麻結・椿屋実梛・林雅樹・池田澄子・浅沼 璞)



小沢麻結
鰻重待つ仕事鞄を傍らに
南風微睡みてなほ日は高き
三四郎こゝろ読み継ぐ日焼して


椿屋実梛
座禅後の脚のしびれやばつたんこ
十薬はいつも寂びたる闇背負ふ
妖精が扇をひらき合歓の花
陰に咲き夕日のちから花岩菲


林雅樹(澤)
空蝉を集めてひとり遊びかな
窓枠を担ひ人行く西日中
江戸つ子の意気ぞ蚯蚓の踊り食ひ
啄木忌書庫の机の灯せる
新緑の樹海に入りて戻らざる


池田澄子
暑し「硫黄島」をGoogleで検索中
風鈴の窓や開けたり細めたり
水饅頭亡き先生を自慢して
幸せそう苧殻の中に居る煙
寝たあとの耳を慕いてアナタは蚊


浅沼 璞
畳の目こすりこすりて青大将
寝返りのSの字蛇とふれてゐる
雑草の蛇をすすつてゐるところ