2018年10月19日金曜日

平成三十年 夏興帖 第十(望月士郎・五島高資・佐藤りえ・筑紫磐井)



望月士郎
蛍をつまむ指先から弥勒
棺を運ぶ内の一人は蟹を見る
金銭感覚サボテンの花咲いた
空蝉をつまむ異郷につままれる
死後のこと背泳で見た昼の月
描かれてヨットは白い過去となる
写真みなやさしい死体砂日傘


五島高資
岩肌の流れ出してや夏の蝶
年輪に墓碑に出水の刻まるる
滝壺に掬ひて仰ぐ朝日かな
河と川出会ひて滾つ青楓
日は海に面影の立つ出水かな


佐藤りえ
飴ちやんが貰へる賽の河原なら
欲望に服を着せても透けてゐる
膃肭臍蛸擲てる土用波
一艘の小舟を待ちて一輪廻
三姉妹仲良いこともメモつとこ


筑紫磐井
雷鳴豪雨おほへる楷の大樹かな
三越や昔ありにし花氷
七時より開演夏のスタアたち