2018年12月14日金曜日

平成三十年 秋興帖 第八(依光正樹・依光陽子・浅沼 璞・佐藤りえ)



依光正樹(「クンツァイト」主宰)
川澄むと町に木賊を刈り収め
蜆蝶止まつて花になりたるか
川の近くに草が生え菊日和
よく晴れて綿取る日和あとわづか


依光陽子(「クンツァイト」)
秋扇を取り出だしたる径かな
澄む秋の胡桃の真下までは行く
残る虫ほどの荒びも松になし
いつも何か弾けて冬はすぐそこに


浅沼 璞
秋霖をふり返りたり鬼の面
樋傾ぐざざと濁れる野分晴
甘食のてつぺんかける野分後
キスチョコのつかみどころもなき秋思
胸焼けのソファーに沈む昼の虫
さんま三つ四つにきられて胴長よ
気をつけの姿勢つかのま天高し


佐藤りえ
秋冷のコットンシャツのくたくたに
バイト来て畳んでおりぬ海の家
台風来むねにラジオをつけさせて
狛犬の犬居にたふれゐたりけり