依光正樹(「クンツァイト」主宰)川澄むと町に木賊を刈り収め
蜆蝶止まつて花になりたるか
川の近くに草が生え菊日和
よく晴れて綿取る日和あとわづか
依光陽子(「クンツァイト」)秋扇を取り出だしたる径かな
澄む秋の胡桃の真下までは行く
残る虫ほどの荒びも松になし
いつも何か弾けて冬はすぐそこに
浅沼 璞秋霖をふり返りたり鬼の面
樋傾ぐざざと濁れる野分晴
甘食のてつぺんかける野分後
キスチョコのつかみどころもなき秋思
胸焼けのソファーに沈む昼の虫
さんま三つ四つにきられて胴長よ
気をつけの姿勢つかのま天高し
佐藤りえ秋冷のコットンシャツのくたくたに
バイト来て畳んでおりぬ海の家
台風来むねにラジオをつけさせて
狛犬の犬居にたふれゐたりけり