五島高資未完なる防潮堤や蚯蚓鳴く
登高や研修医指導研修会
日は海に面影の立つ出水かな
爪先にふれる水面や紅葉狩
石を積む月の光となりにけり
青木百舌鳥ががいももあざみも絮の輝かし
秋灯の光背を負ひ陰を負ひ
寺町や寺にありたる紅の菊
池田澄子古ぶなり風の花野のベンチと我
あの人に触れし風なれ十三夜
秋風や嗚呼とゆるんでゆく眉根
月天心さびしいひとよ落ちてくるな
濁り酒ゆすり未だに干さぬ奴
真矢ひろみ黄落を川面に映し此岸とす
暁闇の漆紅葉の高貴かな
更けるほど天心ずらす紅葉径
ただ狂へ白膠木紅葉の囃しをり
影もたぬ帚木紅葉ありにけり
井口時男道化の秋
道化師のはらわたよぢれ柘榴裂け
月に笑ふピエロ0(ゼロ)を累乗し
天高くアルレッキーノの宙返り
台風の眼に与太郎が舞ひ踊る
紅葉狩往きて還らぬ太郎冠者
月青く猪突の騎士に憂ひあり
秋風や王の道化の綱渡り
筑紫磐井水と日の沸る露をく兜太の里
盆さまざまこの世に生れぬ魂も
幸彦・義幸
十月の忌日重ねて我ら老ゆ