岸本尚毅ばらばらに行く時雨雲しぐれつつ
短日や欠伸の如きムンクの絵
冬の雲なべて大きくこの庭に
経を読み孔雀を飼へる冬の山
冬蠅の身幅広くて石平ら
冬の川映れるものに夜が来て
くちばしの見えぬ向きなる寒鴉
神谷 波コスモスの枯れて竜巻注意報
さざんくわの散るやところにより豪雨
石段を影が勇んで小春日和
水鳥の寄り添つてゐる日暮かな
寒夕焼エプロンの紐きつちりと
松下カロふりむけばふりむいてをり白鳥も
白鳥へ雪 つれないといふ言葉
群れて争ふ 最果ての白鳥も
飯田冬眞着ぶくれやぶつかつて来る夜の色
山茶花の戻れぬ白さ変声期
胸中の獅子飼ひ馴らし寒オリオン
切株の衛星として冬たんぽぽ
卵黄をつるりと飲んで一茶の忌
蒼ざめし馬は枯野の眼となりぬ
渡来仏湯ざめしさうな背中して