池田澄子こがらしのときおり渡り夜の青空
拭くまえの眼鏡に寒く息を吐く
黄粉餅悪い夢見の後引きぬ
ポインセチアあの人むかし若かった
愛を注ぐとは葉を全て落とす蔦
曾根 毅数え日の大鷲にして穀潰し
家族葬から白みゆく霜柱
青く固し蜜柑の尻に指を入れ
山本敏倖絶壁の活断層に冬の蝶
白亜紀へ階降りて冬眠す
初霜やまだら模様の仮面劇
御柱の樹齢を洗う寒月光
燻製の甲骨文字に冬籠る
仙田洋子熊手市混みて社のこぢんまり
熊手売る侘しき裏を見せず売る
大熊手店の裏にもびつしりと
消防車しづかに去つてゆきにけり
落葉道ひろびろとあることのよき
羽子板にふれず羽子板市を去る
羽子板市点る一夜の夢のごと