加藤知子小春日の鳥語おおきく旋回し
寒卵われば少女の黄泉がえり
猪の眼のかなしむときのアドバルン
林雅樹溶接の火花や雪の降り始む
ストーブの匂ふ名画座のロビー
待ち伏せてポインセチアを突出しぬ
河豚鍋やストッキングの蹠が好き
鱈鍋に煮ゆるたらちやんあちゆいでちゆ
北川美美地図になき城跡をゆく十二月
手に星や梯子を昇る十二月
新しき看板の立つ十二月
杉山久子十二月八日盥の底に傷
くちびるに消ゆるコトノハ昼の雪
着ぶくれて番号順に並びをり
夏木久オーロラをと笑みを零す冬菫
死者生者ドリンクバーに屯せる
ボヘミアから手土産さげて花八手
地下室の井戸に写れる地下の灯よ
引継ぎは湯湯婆のことのみ保安室
踏切のことを畳めばロダンの忌
色々な印象くらべ枯芭蕉