2020年2月14日金曜日

令和元年秋興帖・冬興帖追補/令和二年歳旦帖 第六(早瀬恵子・夏木久・中西夕紀・岸本尚毅・菊池洋勝・高橋美弥子・川嶋ぱんだ・青木百舌鳥)

【歳旦帖】
早瀬恵子
にい霞白き羽毛の俳句舞う
嫁が君か君は嫁かとかしこまれ
新年や庚子の産声高らかに
チューと鳴く千五百秋ちいほあきなるお正月


夏木久
明星に馬車繋ぎあり初御空
パソコンの上を暫らく初埃
この夜を軽く着てゆく初厠
初風は厠窓より素つ気なく
初笑すべて昨夜の舌禍にて
ぼくの基地私が爆破す初夢
海鳴りと惑ふ耳鳴り初明星


中西夕紀
口中に舌のごろつと年つまる
休みをる脳へも響け除夜の鐘
大奥のごと羽子板の姫並ぶ
鳥のこゑ虫の翅音や淑気満つ
太鼓打つ役を頂き弓始め


岸本尚毅
煤逃やあてを酢モツの二合半
手に達磨下げて現れ札納
老いの屠蘇まなこつむりて吸ふやうに
日を経つつ出水の跡や初景色
夕翳りしながら破魔矢また売れて
破魔矢売る巫女の齢を問ふまじく
留守の家居留守の家や松も過ぎ

【秋興帖】
菊池洋勝
天高し牛の拒める荷台かな
盗まれた下着並ぶや秋の色
試し書きする筆ペンや冬支度


高橋美弥子(夜守派)
紅葉且つ散れりベビーカーの双子
ふるへる手岬の野路菊の揺るる
芋洗ふ吾が腸の黒かりき


川嶋ぱんだ(夜守派)
人生はがんばらないと秋がくる
秋空に打つ音階のない木魚
掃けば掃くほどに銀杏の石畳

【冬興帖】
菊池洋勝(無所属)
入院の手続き済むや冬の月
年惜しむつけ置き洗う溲瓶かな
喰積の何でも噛める歯を磨く


高橋美弥子(夜守派)
夫も吾も猫も嘔吐す十二月
木々は眠りぬ湖面は真冬みなぎらせ
水面てふスクリーン美し冬の薔薇


川嶋ぱんだ(夜守派)
改札を出れば広場や落葉焚
老人を射殺野原の日は短か
銃声が心に響き雪の声
目薬を落とし怠惰な冬の海
鼻に穴 炭焼小屋は施錠せず
赤い海とうとう青くなる冬至


青木百舌鳥
稲荷社にあぶらげ人に散黄葉
降る雪のバスの窓打つときに鋭し
子の頰のみるみる赤し餅を搗く
食堂のからくり時計年つまる