2020年2月21日金曜日

令和二年 歳旦帖 第七(ふけとしこ・花尻万博・前北かおる・なつはづき・網野月を・中村猛虎)



ふけとしこ
しゆと走るものに巻尺嫁が君
七宝の指輪の金茶粥柱
五つ紋乗せ宝恵駕を送り出す


花尻万博
枯れ薄卵を産ます鳥寝かす
言の葉のうすらひまとふ白菜か
新しき海ウツボの腸は熟れて
すぐ手毬に飽きた人死ぬといふにも
道入れて道を老いしむ置炬燵


前北かおる
房総のやま常葉なる初詣
年越せる葉が欅にも銀杏にも
足指の先まで包む冬日かな


なつはづき
鉄アレイじっと見つめている三日
人日や手帳のすみっこで眠る
ぽっぺんぽっぺんひとり夜のうすうすと
思い出のそこだけが夜鮫きたる
真新しい石鹸の香よ寒に入る


網野月を
数え日を五指に納める令和かな
鳥影の梢に四羽大晦日
眼底疲労の薬を白湯で初燈
目薬を点す手の震え羊歯白し
初場所や舐めたらいかん突っ張り棒
タコ焼やちょっと歪な新満月
寒寒寒痰の絡んでいる烏


中村猛虎(なかむらたけとら)
横たわる百舌鳥古墳群去年今年
太陽の塔の背中の御慶かな
仁徳陵へ続く参道淑気満つ
生物の頂点はヒト虎落笛
年酒酌む今もヒロポン三百円