2021年9月10日金曜日

令和三年 花鳥篇 第十一(仲寒蟬・早瀬恵子・井口時男・佐藤りえ・筑紫磐井・のどか)



仲寒蟬
梅林に迷ひしことは伏せておく
鶯の森の明るさ湖よりす
三方に奇岩絶壁桃の村
草を編むネアンデルタール人の春愁
お若いですねと言つて筍をもらふ
しまはれぬ翅だらしなく兜虫
海月に聞けその海流のことならば


早瀬恵子
スノッブな風のごちそう花見鳥
花パワー天地返しの自粛の園
バロックはロックのオンかパンジー茶
而して母の金魚は喪の素振り


井口時男
春宵の「居酒屋馬酔木」灯りけり
逃水や王国いくつ亡びたる
遠富士へ言の葉若葉ちぎり行く
すひかづら日暮の母の足の裏
ルノワールの少女らにサァ薔薇の鞭


佐藤りえ
測るがに尾を振り回す春の牛
枇杷の実や蓋を組み合はせて遊ぶ
デスメタル聞かば聞けとし夜光虫


筑紫磐井
ドクホリディは死なず炎天なる決闘
助五郎(きょうかく)を葦原雀贔屓にす
  北川美美を思い出し
死んで十両生きて五両の洗鯉


のどか
白鳥座へ戻る交信時計草
素足の子ペディキュアでする自己主張
父の日の似顔絵に濃き鼻毛まで
木耳や百鬼夜行に遅れたる
勝鬨や木耳数多亡者めく