なつはづきあの言葉この言葉夏野から持ち帰る
辰雄忌や驢馬柔らかく風にいる
カタカナが舌にもつれて梅雨寒し
夕虹や心が透けそうなドレス
炎帝がみっしり席を埋め五輪
裸足から幼さ消える片思い
のうぜんか会釈のように日差し揺れ
堀本吟長い触手がゆるゆる水母水くさし
炎天のマスク脱ぐまいエチケット
歩道橋犬とマスクをして夫人
朝顔や水道工事の穴だらけ
飯田冬眞憲法記念日池にはびこる外来種
修司の忌澤田和弥のいない夜
夏の星宿のタオルを首にかけ
語り継ぐ革命前夜ジャスミンよ
朝帰り月下美人を置き去りに
青木百舌鳥(夏潮)花あふち木蔭に風を招じけり
バナナ撮る足を揃へて裸婦のやうに
畳まれて記憶小さし梅雨籠り
夏草の花ののんどを擦る葉も
杉山久子蜘蛛黒く太りたる嵌め殺し窓
剽窃のしづかな蠅として集る
マスクよしっ滅菌シートよしっ晩夏