2022年2月4日金曜日

令和三年 秋興帖 第十一(飯田冬眞・佐藤りえ・筑紫磐井)



飯田冬眞
ことごとく闇の供物や流燈会
歪みても戻る治癒力踊の輪
かさぶたのどこかが濡れて鵙の贄
剣もたぬ身やさいかちの実を垂らす
捨案山子裏地に龍の刺繍秘め
釜めしの蓋に貼り付く夜寒かな
身にしむや郵便受けにガムテープ


佐藤りえ
いやにしづかに物理の神は後の月
やや寒くロリポップ嚙むふつうの子
登高やあれが富士よと云ひつのり


筑紫磐井
菊薫る菩薩 前衛なかりけり
月夜野のあぶら屋に似て非なる(くわい)
宇井博士 遠く白いは秋の道