小野裕三新雪の方程式を解きにけり
続篇のようにヤクルト置いて冬
水仙をまんなかとする都市計画
抽斗に隠されていく百合鴎
冬菜みな手傷を負っていたりけり
渡邉美保冬麗の海底にある山と谷
白き鳥集まる河口寒に入る
冬薔薇一輪しんと日を待てり
曾根 毅昼更けて寒の椿を潜りけり
読む力まだ衰えず冬の庭
ゴールドジムから寒い東京湾望む
鷲津誠次霙打つ小駅に朽ちし伝言板
ひとり言好きな家系やかいつぶり
冬夕焼転校生はまた転校
浅沼 璞凩が廃車を鳴らす渚かな
名盤のジャケットあまた北塞ぐ
空腹のしやつくり凩だよ俺は
赤々と目か降る雪に紛れをる
血の跡をくねくねさせてしまふ狩
寒紅やてかるきしめんの表面
甍へと雪とぎれなく風にのり
眞矢ひろみ来し方は行く末のさき帰り花
極寒の魚骨ぶつ切る疱瘡痕
人参の色淡くなる都会かな
冬の空はぐれる鷗見てゐたり
枯蓮の水出しきって水の中
【歳旦帖】
望月士郎てのひらでさわるあしうら去年今年
初句会シャーペンの中小さなバネ
元日やシンメトリーに鼻をかむ
小沢麻結かまくらの天は雪染むベニヤ板
千歳を手から手巡り歌かるた
初仕事指すらすらとパスワード
前北かおる(夏潮)綱曳の綱のとぐろに餅を撒き
綱曳の綱のべられて雪の町
綱曳の綱に跳びのる丸坊主
小野裕三あとがきのごとく始める新日記
ヨーヨーの跳ね上がりたる淑気かな