曾根 毅葉脈の薄きひかりを囀れり
光る桃われと齢をともにせし
湖の水底固し花の冷え
瀬戸優理子合格を決めし拳や春にひらく
巣立鳥指紋の残る子供部屋
泣きすぎの眼が雲雀野に途中下車
アマリリス恋した記憶だけ脳死
花は葉に二度目は事実婚えらぶ
浜脇不如帰テロメアの増しゆく癌のねぐるしさ
無訓練冷酒キラーT細胞
涼しげにきびすまで真空パック
七重虹ラザロにもキリスト泪
涼やかに地を刺す十字架の柔和
貫く棒じゃなく彩濃しなつやすみ
カルバリの十に畏まるがラムネ
小野裕三春眠の稀に平行四辺形
設計図通りに咲いて一輪草
豆の花双子似たまま老いゆけり
囀りや離れ離れにショベルカー
傷心に虹と名づける選択肢
小林かんな初夏を行きつ戻りつ鶏冠の緋
あめんぼと古墳と浮かぶ昼下がり
空海へさかのぼる寺燕子花
鳥たちも天皇陵も茂りのなか
山滴る神杉のそこかしこ