木村オサム血の音の聞こえるからだ花明り
終わらない準備体操花の昼
まあひとりぼっちでいいか藤の夜は
ちょっとした会釈のあとの蛇の衣
完璧な幻聴ですがほととぎす
鷲津誠次薄暑なり家裁へつづくうねり坂
暮れかかる湖と休日缶ビール
下校児はみな白き腕ひまわり立つ
何もなきふたり暮らしや西日濃し
ソーダ水ふひに相続税の話
神谷波細波や揺れ合つてゐる小判草
風涼し鳥楽しげに鳴いてゐる
庭先
選りし木に取り乱し鳴く老鶯
裏庭に紛れ込みたるねむの花
眞矢ひろみ長茄子の串を誘ふ怖さかな
トランペットの金色鈍し夏の果
天道虫半球の背に空纏め
大西日降りますボタン押す指に
手花火の一閃脇にものの影
浅沼 璞藤房や読書の汝に匂はざる
まんさくが一本ゆるやかな斜面
木瓜の咲く失礼なこと言ひだしぬ
メーデーの目抜き通りを口あけて
五月五日まな板の鯉目覚めたる
袋角はんなり藁小屋に光る
紫陽花の向うを新たなる野犬