水岩 瞳ふらここやまだ歌へます校歌一番
春炬燵しまひ彼のことしまひけり
人間を無防備にする桜花
ゴム巻いて放つ飛行機なら夏野
夏草を刈つて交渉始めんと
学校は対面ばかり風死せり
万巻の花鳥諷詠きらら棲む
下坂速穂乗らずに次のバスを待つ若葉風
木へ影を寄せて遠くへ黒揚羽
向日葵を包む異国の新聞紙
手応へのなき闇にして蚊喰鳥
岬光世切通しへ人往きにけり紫荊
牡丹や雨の乱れを残す蘂
花菖蒲影を崩さず揺れにけり
依光正樹さへづりの光を享けし女かな
桜あり今も故人の思ひあり
食紅を使ふ指濡れ八重桜
幾日も通ひ続けし八重桜
依光陽子白湯淹れて朝はじまる梅若葉
何処よりの柑橘の香や花に雷
揺籃に影射すえごの若葉かな
木格子は木蔦を這はす夕立かな
佐藤りえドローイングの爪伸びてゐる春霞
麦秋の野末に野菜売る戸棚
暇さうなカーネル・サンダースに風鈴
筑紫磐井祝「篠」
しづかなる前衛といふ風が吹く
周辺に風吹いてゐる俳壇史
夜の秋夫と妻の隙間かな