2022年9月23日金曜日

令和四年 花鳥篇 第七(水岩 瞳・下坂速穂・岬光世・依光正樹・依光陽子・佐藤りえ・筑紫磐井)



水岩 瞳
ふらここやまだ歌へます校歌一番
春炬燵しまひ彼のことしまひけり
人間を無防備にする桜花
ゴム巻いて放つ飛行機なら夏野
夏草を刈つて交渉始めんと
学校は対面ばかり風死せり
万巻の花鳥諷詠きらら棲む


下坂速穂
乗らずに次のバスを待つ若葉風
木へ影を寄せて遠くへ黒揚羽
向日葵を包む異国の新聞紙
手応へのなき闇にして蚊喰鳥
  

岬光世
切通しへ人往きにけり紫荊
牡丹や雨の乱れを残す蘂
花菖蒲影を崩さず揺れにけり


依光正樹
さへづりの光を享けし女かな
桜あり今も故人の思ひあり
食紅を使ふ指濡れ八重桜
幾日も通ひ続けし八重桜


依光陽子
白湯淹れて朝はじまる梅若葉
何処よりの柑橘の香や花に雷
揺籃に影射すえごの若葉かな
木格子は木蔦を這はす夕立かな


佐藤りえ
ドローイングの爪伸びてゐる春霞
麦秋の野末に野菜売る戸棚
暇さうなカーネル・サンダースに風鈴


筑紫磐井
 祝「篠」
しづかなる前衛といふ風が吹く
周辺に風吹いてゐる俳壇史
夜の秋夫と妻の隙間かな