2022年9月2日金曜日

令和四年 花鳥篇 第六(妹尾健太郎・松下カロ・小沢麻結・林雅樹・竹岡一郎)



妹尾健太郎
引っこ抜く涙の乱舞かつお潮
麦秋の濃尾三川瞬く間
髪洗う真下音する大江戸線
指なめて風向きを見る子蟷螂
妹の方がわんぱく今年竹


松下カロ
紫陽花はのけぞる誰か過ぎるたび
白波を小さな蛇と思ふなり
洗面器凸凹あれば明易し


小沢麻結
生若布スパークリングワイン買ひ
さくらさくらかの日昨日のやう今も
瑠璃蜥蜴瑠璃躍らせて転び逃げ


林雅樹(澤)
遊民となりて一年夕桜
露出狂神出鬼没囀れる
地割れへとビルも若葉の街路樹も


竹岡一郎
悲の蟬や瞋恚に焦げし背にとまる
夏書重ねてわが妄執を見殺すまで
怨府こそ白蓮(わら)ふ音とどろく
川床に招かん書淫なだめんと
翡翠に魚めぐまるるほど無聊
山盛り素麵無常の如し平らげる
雹止まず人魚も姉も泣くを知らず