鷲津誠次頬骨の尖る老母よ夏の蝶
しかと見つめられおののく油虫
かなぶんぶん転校生にやたら寄る
先頭はくじ引きで決め蟻の列
咄家の善き友ならん雨蛙
木村オサム万緑を見上ぐ胃腸の弱い人
不眠症水母の中は遊園地
手術室に無かったですよ風鈴は
朝曇顔の歯車噛み合わぬ
夕顔に合はせて土下座しに来たる
青木百舌鳥りんりんと麦茶鳴らして配りけり
胡麻油香り鱧天穴子天
植樹して梅雨の濁りを汲み来たる
雌雄無きかたつむりとて紅濃きは
望月士郎疑問符のかたちにみみず干乾びて
白玉のあたりを女医に診られてる
熱帯夜たらりたらりと砂時計
空蝉が背中に爪を立てている
どの窓も殺意やさしく大西日
浜脇不如帰二千年オーバーエージ枠の神
百世紀かけて櫃まぶしをペロリ
成金を中トロで別件逮捕
すみません時間がなくて揚花火
らいてうのココロ毎秒半年後
箱眼鏡生温かりし壱気圧
十字架の鮎そのままのたなごころ