2022年12月2日金曜日

令和四年 夏興帖 第七(林雅樹・花尻万博・水岩 瞳・眞矢ひろみ・竹岡一郎)



林雅樹(澤)
アロハシャツ買ふしまむらの安売に
夏草の茂り売地の札も隠れ
海水浴にはしやぐ心中前の家族


花尻万博
鉄屑に鉄屑商に西日照る
蜘蛛垂らす咎か海より深き沼
猫の目よプールの形の子どもらよ
父母をみな汲みつくす昼蛍
寂しがり屋西瓜の皮をすぐ流し
人寄せる仏八方草いきれ


水岩 瞳
黄帽子の集団渡る川薄暑
黒日傘黒薔薇抱いて焉んぞ
聖五月そびら伸ばして母のこと
巻き戻す身投げ映像沖縄忌
煮て焼いて蒸してレンジの夏料理
幽霊よりやはり人間恐ろしき


眞矢ひろみ
燐寸擦れば七色灯る道をしえ
空蝉に小石を入れて巫女が吹く
大夕焼万象膨らむ気配かな


竹岡一郎
青年頑な怨府の梅雨を艮へ
蛸焼が絶縁状をまろび灼く
喝采に執して喜雨を渇くとは
誘蛾灯声無き嗤ひ照らしをり
蔑しつつ怒りつつ饐え崩えゆくか
忘恩を熱砂の城に憐れむな
見殺しの我が眼ひらくを夕焼染む