2022年12月16日金曜日

令和四年 夏興帖 第九(依光正樹・依光陽子・佐藤りえ)



依光正樹
いまはもう眺めるだけの夏の海
汗かいて夏の夕の靴磨き
川晴れてしばらく梅雨を忘れたる
卓袱台のライスカレーや戻梅雨


依光陽子
雨待てば草かげろふの卵揺れ
るりぼしかみきりこの棘はやさしき棘
一歩入れば楳図かずおがゐて涼し
また一人夏の日暮を置きに来る


佐藤りえ
前脚を虹に踏まれてゐたりけり
プランタン銀座夏行くトッカータ
傀儡派守旧派のり弁に黒揚羽