岸本尚毅盆過やぽんぽんと咲く秋の花
稲の花まみれの稲の匂ひかな
初あらし弁才天に蛇もつれ
広々として点々と桔梗かな
秋晴のただ明るくて駐車場
わが枝豆一つぶ飛んで失せにけり
秋の風雲はうごかず蝶とんで
神谷波砂浜に珊瑚貝殻白い秋
いつか消える足跡秋の浜昼顔
田中一村画
画布に閉じ込め鶏頭の充実
柚子百余顆採りて搾れば寒さ急
山本敏倖丑三つの露地深くするきりぎりす
わたくしを編み込んでいる文化の日
音のない軍靴を連れて鰯雲
またしてもうしろの秋の蝶逃がす
鯖雲の色は即物的である
ふけとしこ細やかな雨よ芙蓉の花が透け
萩は実に手摺の錆が袖口に
こんな日はきつと檀の実の爆ぜる
砧槌罅の中まで日のとどき
金色に蛹の透けて暮の秋
小林かんな木を植えて木の実が落ちるここは駅
すすき葦いずれも屋根に戴く草
柿生って村人はみな芝居の座
道行へ口笛のとぶ鵙日和
ゆらり風秋蚕の夢でなら会える
小沢麻結明日語る夜長カクテルはドリーム
タップする指先遠く星流れ
秋晴やビラ絶妙にちんどん屋