小沢麻結男振りなり飛魚の流線形
海酸漿鳴らしたく浜去りがたく
黒塗りの車止まりぬ鮎の宿
浅沼 璞歓声のかすかに届く夏座敷
絵簾のはためいてゐる不在かな
隙間から笑ひ返してくる裸
蟻の巣に群がるかゆみ上腕に
壁一面苔ぎりぎりに車体かな
兜虫うごくを素手でもち帰る
噴水の奥で懺悔をしてゐたり
望月士郎にんげんの流れるプール昼の月
心臓は四部屋リビングに金魚
はんざきのまなうら飛行船がくる
火取虫あの世の片隅にこの世
転生の途中夜店をかいま見る
曾根 毅どうしても傾いてくる冷房車
血管の浮き上がりたる青葉山
花菖蒲脚の先から消えかかり