2023年12月8日金曜日

令和五年 夏興帖 第七(冨岡和秀・花尻万博・青木百舌鳥)



冨岡和秀
アフリカの実存者来て人光る
不明の「それ」捉えれば我消滅す
思考神ウィトゲンシュタイン我が聖性
頁繰る指先はしる文字群霊
古神道みなもとに居るシャマニズム
岩塊に刻んで読みし阿毘(アビ)達磨(ダルマ)
古インドのヨーガを極め昇天す


花尻万博
水からくり父だんだんに忘れてゆく
どこからを意味と仰つしやる喜雨休み
滝の水この世へと引き戻されて
今は今で他人となりて蕗を跨ぎ
藤枕頭でつかちご遠慮ください
蚊帳低し結び目一つ子に託し
走馬燈増えゆくいとこはとこにも


青木百舌鳥(『夏潮』)
田植機の拍子たかたか稲を植う
かなかなの声や呼応し退潮す
フェンネルが育つて咲いてピザの店
往来の風のぐちやぐちや熱帯夜