俳句新空間俳句帖
スクロールしてみる俳句巻子本。 年二回、媒体誌『俳句新空間』に転載。 SINCE 2012(平成24).12.28.
2023年12月16日土曜日
令和五年 夏興帖 第八(高橋比呂子・鷲津誠次・林雅樹)
高橋比呂子
始原
(
アルケー
)
として多色刷りなり河口
炎昼のつれなき影や始原とす
晩夏かな塒の烏よ
葡萄牙
(
ぽるとがる
)
旅人の喪失早熟のはまなす
紅い手鞠突いている
睡蓮
(
ひつじぐさ
)
みちのくの青葉違えず磊々峡
復興海岸岩壁津波高記夏果
鷲津誠次
手鏡に貧しき素顔桜桃忌
梅雨晴れ間家裁駆けゆくハイヒール
海の日や吾子の歯磨き念入りに
しばらくは会えぬ片恋夏休み
落雷やふいに鳴り止む黒電話
父の島に慟哭めくや油蝉
林雅樹(澤)
蛇の這ひ出づる空家の解体に
ブクオフに寄りて帰らむ夏の暮
汗ばつかかいてんじやねえちやんと舐めろ
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