2023年12月16日土曜日

令和五年 夏興帖 第八(高橋比呂子・鷲津誠次・林雅樹)



高橋比呂子
始原(アルケー)として多色刷りなり河口
炎昼のつれなき影や始原とす
晩夏かな塒の烏よ葡萄牙(ぽるとがる)
旅人の喪失早熟のはまなす
紅い手鞠突いている睡蓮(ひつじぐさ)
みちのくの青葉違えず磊々峡
復興海岸岩壁津波高記夏果


鷲津誠次
手鏡に貧しき素顔桜桃忌
梅雨晴れ間家裁駆けゆくハイヒール
海の日や吾子の歯磨き念入りに
しばらくは会えぬ片恋夏休み
落雷やふいに鳴り止む黒電話
父の島に慟哭めくや油蝉


林雅樹(澤)
蛇の這ひ出づる空家の解体に
ブクオフに寄りて帰らむ夏の暮
汗ばつかかいてんじやねえちやんと舐めろ