山本敏倖ふくろうの含み笑いが伏線
おじぎして枯野の奥に穴あける
でざいんはキューブリックの水の音
凩一号空井戸の足跡
鮟鱇のつじつま合わすト短調
中山奈々(「百鳥」「里」)ががいもの種はせをつて誰かしら
彗星に探査機ががいもの実飛ぶ
夜は雲間よりががいもの枯れにけり
杉山久子朱鷺色のショール愛してより不屈
出戻りの蝦蛄葉仙人掌日を浴びて
酒つよき子らよ海鼠腸もお食べ
福永法弘(「天為」同人、「石童庵」庵主、むかし「豈」同人、俳人協会理事)笑話では済まざる昭和枯虎杖
寒晴や五尺に足りぬ昭和の子
「不器用ですから」と逝きけり外は雪
山田露結 (「銀化」同人)おきざりを見てゐるうちに冬となる
着古しの体にジャケツ馴染みけり
大きさの違ふ三つの枯野かな
内村恭子(「天為」同人)寺町に何ごともなき冬はじめ
足音のあれば口開け冬の鯉
寒の雨花屋に街の色集め
冬帽子いはくありげな書を配り
図書館に朝の光と室の花