2014年11月7日金曜日

平成二十六年秋興帖,第四  (下坂速穂 ・岬光世 ・依光正樹 ・依光陽子・早瀬恵子・真矢ひろみ・羽村美和子・網野月を)



下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
新涼や抜けかはりたる羽も白く
足跡に遠く鳥ゐる秋の潮
風吹いてあれは金木犀の家



岬光世 (「クンツァイト」「翡翠」)
同道は釣舟草のあたりまで
秋湿りライナーノーツ読み返し
街の灯のとどかぬ処ちちろ虫



依光正樹 (「クンツァイト」主宰・「屋根」)
いつどこで船が光るか爽やかに
海あふぐゑのころ草の淋しさに
コスモスや立つて遊んでまた座り



依光陽子 (「クンツァイト」「屋根」「ku+」)
手びさしで歩を止めながら白芙蓉
颱風を来てなまぬるき靴の中
捕りてより虫籠の虫気に入らぬ


早瀬恵子 
白秋の粋な八掛(はっかけ)おつな寿司
錦繍の月の点心おこしやす
竜胆や思わぬ人に思われて



真矢ひろみ (「豈」「俳句スクエア」「SHIKIチーム」等々)
夕月夜アイフォンシックス解体す
一天の揺るる蜉蝣翅立てば
行きずりの秋の蛍を埠頭まで



羽村 美和子 (「豈」「WA」「連衆」同人)
大花野返し忘れた鍵がある
人体に火薬の匂い百舌高音
秋夕焼どの本にも挟んであった




網野月を
左へ走る非常口灯後の月
老後の後蜜柑に人の手の温み
秋高し色神の眼に青き鳥
台風はB型であり蟹股であり