下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)新涼や抜けかはりたる羽も白く
足跡に遠く鳥ゐる秋の潮
風吹いてあれは金木犀の家
岬光世 (「クンツァイト」「翡翠」)同道は釣舟草のあたりまで
秋湿りライナーノーツ読み返し
街の灯のとどかぬ処ちちろ虫
依光正樹 (「クンツァイト」主宰・「屋根」)いつどこで船が光るか爽やかに
海あふぐゑのころ草の淋しさに
コスモスや立つて遊んでまた座り
依光陽子 (「クンツァイト」「屋根」「ku+」)手びさしで歩を止めながら白芙蓉
颱風を来てなまぬるき靴の中
捕りてより虫籠の虫気に入らぬ
早瀬恵子白秋の粋な八掛(はっかけ)おつな寿司
錦繍の月の点心おこしやす
竜胆や思わぬ人に思われて
真矢ひろみ (「豈」「俳句スクエア」「SHIKIチーム」等々)夕月夜アイフォンシックス解体す
一天の揺るる蜉蝣翅立てば
行きずりの秋の蛍を埠頭まで
羽村 美和子 (「豈」「WA」「連衆」同人)大花野返し忘れた鍵がある
人体に火薬の匂い百舌高音
秋夕焼どの本にも挟んであった
網野月を左へ走る非常口灯後の月
老後の後蜜柑に人の手の温み
秋高し色神の眼に青き鳥
台風はB型であり蟹股であり