小野裕三(「海程」「豆の木」)生き物の名前群がる凹面鏡
おとりさま赤い教室へと兆す
極月の犬を選んで生まれ変わる
小澤麻結本堂へ猫の抜け道花八ツ手
鰻くる迄の手酌や燗熱く
冬館漏れくるピアノ何の曲
林雅樹(「澤」)枯園の見えて鉄扉の半開き
柵にシート張つてありけり池普請
行く年や広間に歌ふ演歌歌手
前北かおる(「夏潮」)授かりし子を連れ申す七五三
昇殿の床の冷たさ七五三
ぺしやんこに抱かれてをりぬ七五三
藤田踏青室咲のあやしいほどな用言体
短詩型を一寸止めに笹鳴や
音読に朱をにじませて寒木瓜の
冬の雷 後退りする 槍穂高
寒林に黒斑増えゆく余罪として
早瀬恵子(「豈」同人 )朔旦冬至ちょっといい日の香りせり
小夜時雨毛皮のマリーに敬礼す
金色の接吻はぜるペチカ燃え