神谷 波山の風荒し薄暮の注連飾
こともなく年の始の藷きんとん
参道や迷惑至極の御降り
松過ぎの鴉がやけに親しげに
池田瑠那極光のみどりは朱【あけ】へ去年今年
鸚鵡貝化石しらじら年立てる
オワンクラゲの蒼き虚無さへ年あらた
林雅樹(「澤」同人)吹かれたる棕櫚の葉の鳴る二日かな
御降りや畑の隅の廃車にも
女礼者同じ話を繰り返す
ふけとしこ注連を張る限界集落とも呼ばれ
海峡の橋の全長初明り
かしこみかしこみ声上げて初鴉
福田葉子読初の攝津幸彦夢は美し
南浦和にお降りの雪
初髪の鏡の奥の彎曲よ
関悦史元日の光に知能ありぬべし
光こそ虚無なれ石充つる二日
一椀の暗黒物質(ダークマター)の初笑
瀬越悠矢落書のうへの落書去年今年
初みくじ露西亜のはうを勧めらる
歌留多とる眼は獣らのごとくなり
堀田季何(「澤」「吟遊」)円卓を半周使ふ生け納
姫よりも疳高き騎士百合始
傀儡の九つの孔しまり無し
泛びきて無数の創や初御空
初夢に神の仔羊はぐれけり
初仕事逸れし羊から屠る
前北かおる福沸朝の光の満ちあふれ
白妙の富嶽を眼下避寒地へ
早梅の観音堂へ湖渡り