2015年3月27日金曜日

平成二十七年春興帖、第四 (仮屋賢一・豊里友行・網野月を・瀬越悠矢・小野裕三・小沢麻結)


仮屋賢一
抽斗に余寒のごとく聖書かな
切り抜きの裏に記事ある菜の花忌
石段の高さまちまち武満忌
喪のいろの湖に雨うつ義仲忌
啓蟄やメモの余白にメモをして



豊里友行 
だんもほねもしまじゅううまった球春
みをゆだねいきるしずくの桜の実
潮まねきまねかざるきちおしよせて
とんがればきずついたまま島薊
うりませんやんばるせんの花でいご
やどかりのきちせおいゆく甘蔗(きび)穂波



網野月を
善は母罪は父より卒業式
悪しは母良しは父より入学式
さくら花離れ出会いの道祖神
三月や時間不足していたり
多忙なり四月の朝も昼も夜も



瀬越悠矢
緋と瑠璃と組まるれば雛ガラス館
校庭の四方にゴール卒業す
花さいて見本太郎の大家族




小野裕三(海程・豆の木)
着々と鬼打ち終えし一家族
待春の夜の子の髪を乾かしぬ
地下鉄の潜り抜けきし春の土
人として住まうところに啓蟄の木
三寒四温くるりと風の聖徳太子




小沢麻結
ほろ苦き今宵の酒や白魚汁
河岸うららオフィス昔は上屋敷
燕来る同窓会の通知来る