2015年4月3日金曜日

平成二十七年春興帖、第五 (夏木久・望月士郎・川嶋ぱんだ・花尻万博・下坂速穂・岬光世・依光正樹・依光陽子)



夏木久
春山へ鳥歩きだす影を曳き
ヘラクレス鉢巻をして耕せり
犬ふぐり地球は2月29日
ああだめよ花はさつさと降ろしなさい
花ふぶき夢は浅瀬に棄てしまま



望月士郎 (「海程」所属)
真夜中のしくみ窓辺の風信子
涅槃図の巻き上げられて釈迦回転
春眠を縞柄にしてブラインド



川嶋ぱんだ(船団の会、ふらここ、(  )俳句会)
運送屋タバコを吸えば春兆す
アイドルの臍から湧いて水の春
たんぽぽや区画整理のまだ途中
犬ふぐりのナイルの泪ほど青い



花尻万博
永き日や柔らかき幕子を包み
霞み易き駅舎に舟の繋がるる
寄る辺無き水菜と吾が家系かな
歌詠みに敵はぬ桜荒びけり
耳を引く海の汽笛卒業よ



下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
花に色莟に色の寝釈迦かな
あつまりてはなれて春は浮寝かな
雫して燕来る日もきつと雨



岬光世 (「クンツァイト」「翡翠」)
花馬酔木宿泊街へ荷を運び
高坏に粒を数へて雛あられ
壺焼の身のぷるぷると捩ぢり出て



依光正樹 (「クンツァイト」主宰・「屋根」)
春寒のおもて通りをまつすぐに
木の上の木の下の音余寒かな
種袋音して種の生きてゐる



依光陽子 (「クンツァイト」「ku+」「屋根」)
突き挿せる棒や芽吹を感じつつ
橋青く彼方も青く鳥雲に
蓬摘んで雲を圧したる如くなり