水岩瞳
おととひもきのふもけふもさくらかな
桜まじ歌ふは「わたしの城下町」
クラシック喫茶
木屋町桜ここはミューズがあつた場所
ほめられてばかりじやさくらもつまらない
わびさびも細み軽みも散る桜
小林かんな
ふところに夏うぐいすと亀の池
若鷹の心にかなう風来たる
一日を荒ぶる青鷺でありぬ
神谷波 (「豈」)
古都の空しつとりナイチンゲール鳴く
煙突に仲睦まじく鸛
物乞ひもかもめも薄暑の甃
そこここに遺跡そこここに罌粟の花
墳丘の内部暴かれ罌粟の花
飯粒や山鳩の鳴く谷若葉
獣らは息をひそめて椎の花
田中葉月
白れんや大地は胎児さしだしぬ
骨壷のガタガタ言ひぬ濃紫陽花
どうしてもあなたでは駄目水鶏鳴く
花薊生まれも育ちもCity girl
消えさうな今日と言ふ日の白牡丹
これやこの男心や松の芯
福田葉子
たまさかに人を疎みぬ花の兄
アンニュイの午后やアネモネの濃紫
雲珠櫻むしろ紫長岡忌
藤の房黄泉のひかりを宿しつつ
青梅に微量の青酸深きひる
羽村 美和子(「豈」「WA」「連衆」)
三角定規なぞって五月の森開く
白薔薇鎖骨ラインを出してみる
青葉闇奥に仮面が吊されて
青水無月 戦に征きたい人は手を
永遠にダンボ空飛べ花水木