2015年5月15日金曜日

平成二十七年花鳥篇、第三 (東影喜子・ふけとしこ・望月士郎・堀本 吟・山本敏倖・仲寒蟬)




東影喜子
囀や君が笑うといふ事件
特急の過ぎて菜の花畑なり
桜蘂降るよお母さん聞いて



ふけとしこ
頬白に朝来る今日の喉を張り
郁子咲きしことを一行加へけり
捨てらるる家一八の群れ咲くも



望月士郎 (「海程」所属)
ひとりの日巣箱の穴に目を落す
足裏にマリアの凹み鳥雲に
とおりゃんせ花降る夜のうしろまえ



堀本 吟     
たんぽぽの絮はまあるい地球なり
おやしらずが横へ出てきたつくしんぼ
おやしらず抜いた大人や時計草
老鶯や笑気麻酔の部屋に居て
手術後の目ざめ窓から夏がらす



山本敏倖(「豈」「山河」)

青眼の切っ先が来る藤の影
化石まで韋駄天と紹興酒かな
あやとりの宇宙を描く炭酸水
昼寝は甘酢甘酢らしくする
黒日傘をはみ出す尻尾昼の月




仲寒蟬
真昼間の星とも見えて花辛夷
登りゆく竜と交差し落雲雀
葬の村いきなり連翹など咲かせ
街騒を力としたり初燕
蝌蚪の死をなかつたことにして長雨