2015年5月22日金曜日

平成二十七年花鳥篇、第四 (小野裕三・早瀬恵子・浅沼・璞・林雅樹・網野月を・佐藤りえ)




小野裕三 (「海程」「豆の木」)
飛花落花基礎科教室やや暗く
万有引力の降る町花ミモザ
青空の定義はどこだ水芭蕉

 
早瀬恵子 (「豈」同人)
一瞬を光り溢れる花鳥かな
艶書かなタータンチェックに花篝
この渓に新たな時や鳥の春


浅沼 璞
右にやや傾ぐ癖あり姥桜
総身の皺伸ばさばや桜守
牡丹めく唇めくれ端女郎
花魁は御歯黒溝で目白押し
やじろべゑ囀りのむず痒くして
囀りを凡人あたら上の空
百千鳥串二万本塩千噸



林雅樹 (「澤」)
幔幕の雨に濡れたる桜かな
燕や主死にたるゴミ屋敷
明治座に指原莉乃や暮の春
新樹に消ゆる下着泥棒三鷹の怪


網野月を
空炬燵ねこに苦労と意地と見栄
憐れなり子猫の視線に動くもの
この頃はスリムなパンツ仔猫小猫
わがままだけど嘘はつかない子ネコ
母の日に父の朝寝を起こす猫


佐藤りえ
カーテンなくて桜の見える部屋
シベリアに水疱瘡のやうな穴
皇帝に蝶の脚ある砂漠かな
宇宙塵載せて額のプレパラート
満身の鱗剥落人となる