小野裕三 (「海程」「豆の木」)飛花落花基礎科教室やや暗く
万有引力の降る町花ミモザ
青空の定義はどこだ水芭蕉
早瀬恵子 (「豈」同人)一瞬を光り溢れる花鳥かな
艶書かなタータンチェックに花篝
この渓に新たな時や鳥の春
浅沼 璞右にやや傾ぐ癖あり姥桜
総身の皺伸ばさばや桜守
牡丹めく唇めくれ端女郎
花魁は御歯黒溝で目白押し
やじろべゑ囀りのむず痒くして
囀りを凡人あたら上の空
百千鳥串二万本塩千噸
林雅樹 (「澤」)幔幕の雨に濡れたる桜かな
燕や主死にたるゴミ屋敷
明治座に指原莉乃や暮の春
新樹に消ゆる下着泥棒三鷹の怪
網野月を空炬燵ねこに苦労と意地と見栄
憐れなり子猫の視線に動くもの
この頃はスリムなパンツ仔猫小猫
わがままだけど嘘はつかない子ネコ
母の日に父の朝寝を起こす猫
佐藤りえカーテンなくて桜の見える部屋
シベリアに水疱瘡のやうな穴
皇帝に蝶の脚ある砂漠かな
宇宙塵載せて額のプレパラート
満身の鱗剥落人となる