関根かなあたたかき日にしてください散骨は
一瞬も永遠も知るしやぼん玉
陽炎の出口にもうひとりのわたし
中村猛虎(なかむらたけとら。1961年兵庫県生まれ。「姫路風羅堂第12世」現代俳句協会会員。)わたくしを数えて下さい愛鳥週間
さくらさくら僕が残せたものは何だ
花の宴つまみはナトリと決めてます
車前草やクロスワードは埋まらない
君くれし玩具の指輪吊り忍
向日葵のネイルが捲る堕落論
山田露結(「銀化」)夏近き水の破片としてわれら
緑陰や人形の顔ひび割れて
蠅を打つ妻眺めゐて午後長し
夏木 久さう言へばそんな仕事も五月雨の
薔薇園のとほい渚を咀嚼せり
缶蹴りのそれはそもそもボブ・ディラン
原発の風に吹かれて鳥雲に
坂間恒子うぐいすの声と声とがボッティチェリ
無国籍のおとこありけり桜貝
山門のさくら青空はいらない
堀田季何(「澤」「吟遊」)花の雨巫女の囈言(うはごと)聴くごとく
花の樹を抱(いだ)くどちらが先に死ぬ
花の雲鳥容れたれば鳥殺す
月射せば獣の匂ひ犬桜
桜咲く民の幸薄るるごとく
花衣脱ぐや顔だけ汝に向け
大井恒行山の鳥くだりて来たれ花こぶし
鳥とべる孤影は澄みて鳥世界
わが鳥の四月の羽の濡れこぼる