2015年5月8日金曜日

平成二十七年花鳥篇、第二 (関根かな・中村猛虎・山田露結・夏木 久・坂間恒子・堀田季何・大井恒行)




関根かな
あたたかき日にしてください散骨は
一瞬も永遠も知るしやぼん玉
陽炎の出口にもうひとりのわたし


中村猛虎(なかむらたけとら。1961年兵庫県生まれ。「姫路風羅堂第12世」現代俳句協会会員。)
わたくしを数えて下さい愛鳥週間
さくらさくら僕が残せたものは何だ
花の宴つまみはナトリと決めてます
車前草やクロスワードは埋まらない
君くれし玩具の指輪吊り忍
向日葵のネイルが捲る堕落論



山田露結(「銀化」)
夏近き水の破片としてわれら
緑陰や人形の顔ひび割れて
蠅を打つ妻眺めゐて午後長し



夏木 久
さう言へばそんな仕事も五月雨の
薔薇園のとほい渚を咀嚼せり
缶蹴りのそれはそもそもボブ・ディラン
原発の風に吹かれて鳥雲に



坂間恒子
うぐいすの声と声とがボッティチェリ  
無国籍のおとこありけり桜貝
山門のさくら青空はいらない



堀田季何(「澤」「吟遊」)
花の雨巫女の囈言(うはごと)聴くごとく
花の樹を抱(いだ)くどちらが先に死ぬ
花の雲鳥容れたれば鳥殺す
月射せば獣の匂ひ犬桜
桜咲く民の幸薄るるごとく
花衣脱ぐや顔だけ汝に向け



大井恒行
山の鳥くだりて来たれ花こぶし
鳥とべる孤影は澄みて鳥世界
わが鳥の四月の羽の濡れこぼる