2015年5月1日金曜日

平成二十七年花鳥篇、第一(杉山久子・曾根 毅・福永法弘・内村恭子・木村オサム・前北かおる・仙田洋子・陽 美保子)



 杉山久子
雲雀野に雲ばかり見て長居せり
薔薇は蕾解きつつ雫こぼしつつ
梨の花ほどの白さの名刺受く


 曾根 毅(「LOTUS」同人)
金屏の冥きところに山桜
巣箱からこの世の空を見ていたる
閑かさや死を待つ人と風見鶏


 福永法弘(「天為」同人、「石童庵」庵主、俳人協会監事)
好色者すきものと我が名呼ばれん初桜
巣立鳥虚子に三高時代あり
バスで行く修学旅行花水木


 内村恭子(「天為」同人)
春宵や羽あるものが帰る水
夕闇にまぎれ飛びたる蚊喰鳥
闇深くなれば夜鷹の高き声
青葉木菟静かに首をひねりたる
歯朶青し異形のものが浮遊する
水無月の森の夜明けの水蒸気
鳥たちの目覚むる時や虹生るる


 木村オサム(「玄鳥」)
分度器を透かして桜見てをりぬ
夜桜やぬっと現る両陛下
ちちははを見かけしあとの花筵
思い出し笑いのかたち夕桜
晩餐のユダの盃飛花一片
死ぬまでは少し離れて見るさくら
平成は貧血の顔花明り


 前北かおる(「夏潮」)
若桜いつかももいろクローバー
朱鷺色を重ねて乙女椿なる
絵の道具取り散らかして若草に


 仙田洋子
流し雛バンザイクリフまで来ぬか
   お大事に
春の風邪引きし女に会へぬまま
先生が先に着いたる春の川


 陽 美保子(「泉」同人)
白文と読み下し文囀れり
戯れに鴨追ひかけて残る鴨
曇天は雲ひとつなし揚雲雀