秋月祐一(船団の会)楽しげな手話のおしやべり小鳥くる
土瓶蒸し父と慕つてゐる人と
ペン先はぬるま湯のなか秋惜しむ
青木百舌鳥(夏潮)案山子ともスピード違反抑止とも
毛見なぞに非ずよ見惚れゐたるだけ
栗の毬足の親指このあたり
のぼり来て籠の茸のしづみをる
秋空が近しレタスに甜菜に
飯田冬眞饒舌なふりは処世と法師蟬
スイッチをつけては消しぬ夜長かな
ちちろ虫母は日記を盗み読む
海遙か無臭の菊を供へけり
虫の闇木馬に体ゆだねをり
十三夜記憶の紐を解くやうに
残菊や紫煙まみれの未定稿
宮﨑莉々香食べられてしまふかまきりとかまきり
朝顔に吸ひ取らるるが時間なり
パソコンのうへの柚子から黄色くなる
北川美美秋灯の沈みつつ揺れ野外劇
鳥と鳥ぶつからず飛ぶ昼の月
印度とか新世界とか林檎の名
大井恒行あさがおに山川のかげ陽のなげき
晩夏晩秋はんざきを飼い首長し
秋ついり魔女をさびしむ窓の雨
筑紫磐井秋日傘が行くそつけなきメロドラマ
兜太の字溢れて八月らしき街
銀座にも芋名月の老舗かな