2016年2月12日金曜日

平成二十八年歳旦帖 第四 (浅沼 璞・坂間恒子・網野月を・近恵・前北かおる・内村恭子)



浅沼 璞
   悼・澤田和弥
初東雲祈りはいつも目尻から




坂間恒子
初御空ショートステイの母おくる
四日はや整形外科の待合室
人日や百羽の鴉薮のなか




網野月を
来い来いに芒が残り年暮れる
終着駅は始発駅なり去年今年
レンジ上の張りぼて申に咲く淑気
初釜の萩の貫入数えけり
雑煮餅下になるとの隠れいて
三日なら駅伝を視てべっこ飴
伸し餅の耳を磯辺に七日かな




近恵 (炎環・豆の木)
数え日の肉体ことばとは違う
水掻きに血管あまた初日の出
鉢巻に額の皮脂がお正月




前北かおる(夏潮)
惣領の立ち働ける雑煮かな
数の子を白木の箸につまみけり
御降や雲の帳の暗からず




内村恭子 (天為同人)
お降りの静か天井画の豪華
招き猫飾りて仕事始とす
柏手に始まる市の淑気かな