青木百舌鳥 (「夏潮」)冬濤の全幅にして襲ひ来る
雪降りつぱなし晴れれば風花に
風力発電機白鳥の暮らす町
街灯がシャワーの如し小夜小雪
年賀状の補遺として書く女の名
しなだしん (「青山」同人)元旦のましろきものに足の裏
日翳りてすぐ日の戻る初景色
漱石のやうに蕎麦湯をすすりけり
五島高資冬の陽を見て実をつけて帰りけり
初凪やムーの山の端浮かびたる
日と影と歯朶に溢れてをりにけり
仲寒蟬人参の赤うつくしく雑煮椀
雑煮食ふむかしの父は柱背に
初夢の中で仕事をしてゐたり
亡骸の運ばれて行く松の内
信号の青のずらりと初景色
佐藤りえ初空やムスカイ・ボリタンテス飛行
礼者来ていよよ鏡を輝かす
四方から春著の猿の来たりなば
宝船来よ金襴の波越ゑて
口開けて凧を見てゐる男の子
石童庵実名と虚名の乖離去年今年
還暦に一齢加へ初山河
出初式一斉放水にて了る