もてきまり啓蟄は身を切るごとしひきこもる
死んだのよあなたと私花の宿
偽の死の枕二つや沈丁花
青木百舌鳥水道の遅日の船の往き来かな
また汐吹貝(しほふき)白牌引きし心地なり
浅蜊掘る止めどきさがしはじめをり
雨音に余儀なく目覚め春嵐
捕へたる蟹も加へて浅蜊汁
浅蜊汁明るき色の砂残る
林雅樹 (「澤」同人)寂しき街へ佐保姫乳首からビーム
化粧品売場はいつも春みたい
下着つけマネキン首のなき遅日
スカイツリー傾く桜満開に
サテュロスの女を攫ひゆく春野
早瀬恵子さくら美人さくら美(うま)しや国の暁(あ)け
催花雨やTOKYO・KYOTOかんばせに
花代と仏門の線香もえ咲かる