2016年4月15日金曜日

平成二十八年春興帖 第五 (もてきまり・青木百舌鳥・林雅樹・早瀬恵子)



もてきまり
啓蟄は身を切るごとしひきこもる
死んだのよあなたと私花の宿
偽の死の枕二つや沈丁花




青木百舌鳥
水道の遅日の船の往き来かな
また汐吹貝(しほふき)白牌引きし心地なり
浅蜊掘る止めどきさがしはじめをり
雨音に余儀なく目覚め春嵐
捕へたる蟹も加へて浅蜊汁
浅蜊汁明るき色の砂残る




林雅樹 (「澤」同人)
寂しき街へ佐保姫乳首からビーム
化粧品売場はいつも春みたい
下着つけマネキン首のなき遅日
スカイツリー傾く桜満開に
サテュロスの女を攫ひゆく春野




早瀬恵子 
さくら美人さくら美(うま)しや国の暁(あ)け
催花雨やTOKYO・KYOTOかんばせに
花代と仏門の線香もえ咲かる