ふけとしこたこやきの箱の汗かく春一番
起き抜けの水に放して三月菜
囀りの散つて隅々まで青空
望月士郎 (「海程」所属)左手は右手で洗う多喜二の忌
貝寄風や胎児に耳のできあがる
ブランコを漕ぎつつ奴隷船のこと
牛乳の表面張力春満月
人形抱いて海市に向う船着場
佐藤りえ渡されて犬にほひたつうらら哉
痰壺を眺めて春の日の暮らし
アイシングクッキー天竺までの地図
首すぢの空気穴から春の塵
睫なき菩薩のまなこ彼岸西風
真矢ひろみ春曙光二度寝の夢に妣の坐す
大ぶりの霊を輪切りに長閑なり
碧天は御霊に狭し揚雲雀