下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)鳴き交はしたき鳥もなき彼岸かな
佐保姫やけふより月の下弦なる
人間と大樹は晴れて穀雨かな
岬光世 (「クンツァイト」「翡翠」)啓蟄の赤らんでゐる埴輪かな
種床や起きる起きると夢の中
ゆるやかに靴音止みぬ初桜
依光正樹 (「クンツァイト」主宰・「屋根」)苗札やこの双葉には光さし
手が冷えてほの明るさの初桜
古草に木の花いくつひらきたる
依光陽子 (「クンツァイト」「屋根」「ku+」)そのうへをこころたゆたひ蜷の道
摘まんとす土筆ありけり指のはら
花粉とばし尽せし土筆つひに鳴る